あいつは「センスがいい」とか、「センスが悪い」とか良く言いますよね。
仕事論などを他の人と話していると、技術的なことや努力の方向とか、いろんな話題がでてきます。
しかし、結局「センス」が大事ってことになるよねって結論に落ち着くことがしょっちゅうあるんです。
でもそのセンスって一体何なのか?
ここがイマイチ言語化できてなかったんですが、ようやく答えのうちの1つが書けそうな気がします。
今日はセンスとは何か?ということに少し自分で納得のいく説明ができそうなので書いてみます。
センスとは何か?
まず結論から書きますと、センスとは「1を聞いて10を知る」こと。
言い換えるなら文脈を読む力のことであると言えます。
昨日、何気なくこんなツイートをしたんですよね。
お坊さんに必要な資質。
年配の方のしゃべる「ほれ、あそこのナニのあの人の、あれがナニしてアレやったんや。」を解読する想像力。— 三原貴嗣〔へんも〕 (@henmority) March 15, 2017
このツイートのことを考えていたら、センスということが明確になるなと思ったんですよね。
「あれやこれや」っていう言葉から内容がピンときて理解できるということは、まさに文脈を読むということだなと。
これは目や耳に入る「言葉の表面上の意味」だけを理解していたのでは、相手が何を言いたいのかその真意を理解できません。
- 地域の情報
- 人の情報
- 過去に話した情報
- 相手との関係性
- おかれた状況
- この話がどこに向かうのか未来の展望
- しゃべる表情や話す雰囲気
これらの情報を総合して「あれ」が何をさして、「これ」が何を意味するのかが読み取れるわけです。
この文脈を読む力というのはお坊さんに限らず、どんな立場やどんな仕事でも役に立つ能力なのです。
というより、この能力さえあればどこでもやっていけるんですね。
この文脈を読む力とはどういうことか?ということをより具体的にすると、2つの能力にわけることができます。
それは言葉の空間的な意味の広がりをとらえる能力と、時間的な軸をあわせて現在地点をとらえる能力のことだと思うんです。
1.言葉の空間的な意味の広がりをとらえるとは
たとえば「トマト」という言葉を見てどう思いますか?
▼イメージするのはこれですよね?
でも「トマト」という言葉には食物の名前を指し示すためのただの文字表現だけじゃなくて、実際に言葉に発する時には言葉の周辺に広がるイメージや手触りがありますよね。
- 赤い
- 甘い
- 酸っぱい
- 青い
- 夏
- 水滴
- 汁
- へた
- トマトの臭い
- 丸い
- きゅっとした手触り
などなど、「トマト」とただ文字で表現されたものだけじゃなく、空間的に言葉のもつイメージを拾うことができます。
話をしている人のイメージしている「トマト」はどんな手触りをもった言葉なんだろうか?
という言語以外の周辺のイメージを想像しながら読みとると、言葉としての表現以上の内容を理解することができます。
言葉の表面だけをとらえる人は「1を聞いて1しかわからない人」。
周辺のイメージまでとらえられる人は「1を聞いて10を知る人」になるのです。
2.過去から未来までを頭において現在地点を理解する。
もう1点は時間的な流れをイメージして現在を理解するということ。
過去の情報と、未来の展望の両方をイメージにおきながら今の立ち位置を考えるということです。
「昔からこうやってきた」という過去のことだけを基準に選択をすると、この先通用しないかもしれません。
またこれからの未来だけを考えて突っ走ると、ちゃんと過去に学んでおけば避けられたはずという失敗をしてしまうかもしれません。
過去からどういういきさつがあって今があるのか?
またこれからどうなっていくだろうか?
温故知新とも言いますが、この過去と未来の2つの視点から複合的に現在地点を理解することが大事なのです。
これはバックホームを中継するセカンド的だ
これを説明するのは難しいんですが、ぼくのイメージとしてはあれですね、野球で言うところのライトからバックホームするときに中継するセカンドのポジション取りみたいな感じですかね。
ボールを投げようとしているライトの位置と、これから自分が受けて、次に投げるキャッチャーの位置の両方を確認して立ち位置を決めます。
そして次に、自分が投げることを頭に置きながらライトからの球を捕球し、キャッチャーにむけて最小の動きで投げてホームに中継するわけです。
もうおわかりだとは思いますが、ライトから球を受けるというのは、過去の情報を整理して受け取るということです。
過去から未来の時間軸の中で、現在の自分はどこに立ち位置を置くのか?そして何をしないといけないのか?
そのように過去から未来との両方に視点をむけながら現在を理解する力が、文脈を読み取るために必要なもう1つの能力なのです。
センスがいいというのはこの2点がおさえられていること
センスがいいという人はどんなジャンルであれ、この2点を抑えてポイントになる芯をとらえるのがうまいんですよね。
たとえばファッション。
センスがいい人ってのは好きなように服を選んでいるように見えて、やはりその場の状況をよく把握しています。
自分の体型や雰囲気をよく理解し、なおかつこれまでのブームや流行ということを踏まえて、次に流行るものの「兆し」みたいなものをとらえて服を選ぶことができるわけです。
センスが悪いというのはまさに文脈にあってない服装になってるということですね。
仕事も同じ。
これまでの自社が作ってきたものの強みやパートナー企業との関係性をおさえ、社会の流れを踏まえた上で先んじた一手をうつ。
未来の成功ポイントを明確にして、過去との位置関係を考えて現在取り組むべき事を決めるんですね。
表面に見える部分の周辺にふくまれる物事の意味と、過去から未来への時間的な意味を総合して、現在やるべきことを決める。
その精度が高いことをセンスがいいというのです。
センスを鍛えるにはどうすればいいか?
一番はこれですよね、センスがいいといわれるものに、五感を通して実際にたくさん触れるということ。
そのとき、最初は自分の善悪判断や好き嫌いをあまりいれずにまず触れてみましょう。
そしてそのマネをしてみましょう。
ファッションだったら参考になる人と同じものを買えばいいし、仕事だったらセンスのいい先輩なんかを見つけてただマネをするんです。
すると、マネをしているうちに、「なぜセンスが良いといわれるのか?」ということの構成要素がなんとなくわかってきます。
五感を通して目に見えるもの、肌に触れるもの、音に聞こえるもの、これらの細かなデータを収集し、その情報どうしが関連づけられるようにトレーニングしていく。
「センスを鍛える」とはよく言いますが、こうやってセンスは鍛えられるものなんです。
すると、物事の構成要素として何をおさえておく必要があるのか、そしてどういう経緯で今があり、これからどうなっていくのかという文脈を読む力、センスが養われていくのです。
センスとは何か?まとめ
センスというのは文脈を読む力ということ。
その目に見える物事の表面だけじゃなくその周辺にまで想像をめぐらせ、過去から未来までを想像の範囲に含めて現在地点を理解するということです。
- 目に見えている部分の周辺の状況まで理解する力。
- 過去から未来の中で、今とるべき位置を想像しながら現在を理解する力。
この2つの力がうまく機能することがセンスであり、文脈を読む力と呼ぶのです。