こんにちは、3児のパパブロガーのへんも(@henmority)です。
香川県のネット・スマホゲーム禁止条例が世間を賑わせていますね。
正しくは香川県ネット・ゲーム依存症対策条例といいます。
条例の素案を読んで問題点が多すぎると思うんですよね・・。
条例として決まる前に意見を表明しておく必要があると思い、パブリックコメントに投稿する前にここにまとめてみました。
家庭内でルールを作ることと、条例として決まってしまうことは大きな差があります。
思いつくままに書いていますのであまりまとまっていませんが、パブリックコメント受付期日までに加筆して投稿しようと思います。
ゲーム依存症対策は必要
この記事はゲーム依存症になって、生活が困難な状態になっている人を放置してよいと言っているのではありません。
ぼくはゲーム依存症に対する対策は必要だと考えています。
生活が困難なレベルになっている人には適切な処置やサポートはするべきだと考えている上で、この条例では意味がないよという指摘をしています。
この条例のメリットはひとつだけ。
親がこどもに「条例で決まっているから1時間にしなさい。」と言いやすくなることだけです。
交渉の余地を残さないように親が強制力を発揮しやすくなるだけですね。
もし、これでいいやんと思っているなら、多くの問題点を見落としています。
わかりやすく説明しますので、このあとの文章を読んでいただけたらと思います。
はっきりいって、この条例案は香川県民、こどもたち、ひいては日本全体のためにデメリットしかないと言っても過言ではありません。
おそらく依存症対策になってない
まず、この条例は依存症対策になっていないという点です。
麻薬などと同列に扱っているが、ゲームと麻薬は違うということが議論されていません。
麻薬は人体に直接作用するものですから、「私はコントロールできる」というのは成り立ちません。
麻薬を打てば本人の意思に関係無く100%薬の影響を受けてしまいます。
しかしゲームは麻薬じゃありませんから。
ゲームをしたら100%中毒者になるのなら禁止の意味がありますが、多くの場合適切につきあえるわけです。
実際、中にはどっぷりハマって依存症とよばれる状態になる人もいるのはわかります。
でも、その依存症はゲームがそもそもの原因なのか特定しなければなりません。
依存症に至る過程や、生活環境をきちんと調査して個別に対応することが依存症解決への第一歩ではないでしょうか。
要はその人がそのゲームの世界にしか居場所がないと感じてしまう周辺環境や生活環境の改善をしない限り、依存状態を解決するのは難しいんだろうと思います。
誰かに強制的に規制されて、依存状態の人が「じゃあ依存や〜めよ。」とはならないでしょう。
一律禁止の条例はうまく付き合えてる人にとってただ不便になり、依存状態の人はそんなこと関係なしにゲームをするでしょう。
麻薬依存の患者さんのドキュメンタリーをみても、依存症を脱するためには周りで支える人の協力が不可欠です。
本人がやめようと思い、その努力を周りの人達が支える。
その構図がないと、「ただ禁止」にしたところで解決策とはならないように感じます。
禁止の条例よりも、支えるコミュニティづくりや体制づくりに労力を割いて欲しいものです。
なぜ対策なのか?
支援やサポートという考え方のほうが適切ではないでしょうか。
ゲームの時間ぐらい親子間で約束をつくるべき
そもそもゲームやネットの時間なんて、条例で決めるような内容ではないんですよ。
家族のライフスタイルにあわせて、「このぐらいにしようね」と決まりを作り、こどももそれを守る自発的なルール作りの経験が教育には大切です。
こどもの成長や友人との関係性の変化によって、ネットやゲームとの適切な距離もかわります。
大きくなるにつれてSNSの役割も高まるので、スマホやパソコンの利用をする機会も増えるでしょう。
デジタルサービスにどのくらい課金するか、お金の問題もありますね。
それを成長の状況に応じて親と子が交渉によってその場のルールを作り、守る。
ルール作りと約束を守る課程を通して学ぶことが教育には大事なのではないでしょうか。
よく考えずに禁止は一番楽で知恵のない方法
交通事故を減らそうと思ったら、一番効果的な方法は車を一斉に禁止にすることです。
車を禁止にしたら、交通事故の多い香川県も即座に日本で一番交通事故の少ない安全な県にすることができます。
でも、それは無理ですよね。
どんな道具も利便性とリスクのバランスで成り立っています。
それを安全にコントロールして使える技能と付き合い方を身につけることが大事です。
課金とガチャの制限をしたいなら逆効果
課金とガチャの制限をしたいなら時間制限はまったく逆効果だと思います。
それはゲームに課金する理由から考えると自明のことです。
強くするための課金
課金する理由のひとつはプレイヤーを手早く強くするため。
時間をかけて経験値を積まなくても、課金によって強くなれるんですね。
強いアイテムを手に入れてゲームを有利に勧めるために課金をするわけです。
これは課金によって本来必要なはずの時間を買っているのです。
ですからゲームの時間を制限するとなると、決められた時間内にゲームを進めるためにより課金したくなるんですね。
課金を防ぐための時間制限が、より課金したくなるための力となる。
原因と対策がまったく逆方向をむいているのではないでしょうか。
ガチャのための課金
もうひとつはガチャと呼ばれるシステムで、レアアイテムを手に入れるために射幸心をあおって何度も課金させるという仕組みですね。
これは確かにギャンブルと同じように依存症を誘発するひとつの仕組みだとは思います。
ガチャをコントロールするのは技術的な問題です。
ガチャの仕組みを制限する、もしくはそれほど課金しなくても一定の確率以上でアイテムがでるように技術的な設定をすること以外に課金量を調整することはできません。
条例によって遊ぶ人の時間制限をしたら解決する問題ではありません。
問題点の切り分けができていない
社民党香川県連合 代表 高田よしのりさんのブログを読む限り、今回の条例は「ガチャの規制」をしたいということのようです。
それならガチャの規制に焦点を絞った内容にするべきですよね。
- 課金とガチャの問題
- 射幸性の問題
- ゲームが身体的に影響を及ぼす問題
これらはすべて別の議論のはず。
それすら定義づけできていない上、線引ができないこと、実効性がないことはブログ内でも書かれておられます。
ネットなのか、ゲームなのか、そもそも依存につながるようなゲームとは何を指すのか?
定義付けをしっかりしてほしいものです。
条例適応範囲が広すぎて通常のネット使用まで制限対象になっています。
他の依存症対策との整合性がなさすぎる
例えば、アルコール依存症、たばこの依存症を考えてみてもこのゲーム禁止条例の不自然さがわかります。
アルコール依存やたばこ依存になってしまった場合、依存症当事者に対するケアはもちろん必要です。
しかし、その予防のために20歳以上全員の飲酒量やタバコの制限をしていますか?
ビールは1日1本まで。
たばこは1日5本まで。
これは依存症対策なので、県民全員が従う必要があります。
こんな条例ができたらどうですか?
おそらくお酒を飲む人、たばこを吸う人も同じことを言うでしょう。
「なんで良い付き合い方をしてる人まで制限されないといけないんだ!」
「お酒やたばこで救われている人がいるし、メリットがある側面もある!」
「経済がまわらない」
こどもたちのゲームだって同じではありませんか?
こどもたちの権利をあまりに軽視していると思います。
法人のコンプライアンス意識が無駄に問われる
この条例が決まった後は法人主催のゲーム大会もしくはゲームに関わるイベントはほぼ開催できなくなることが予測されます。
これは直接的に60分の制限があるからというのもありますが、それ以上に企業のコンプライアンス意識が問われるから開催できなくなります。
悪法も法なり。
と、ソクラテスが言ったように、1度決まった条例は守らなければなりません。
個人なら「まぁばれなかったら良いよ」と思う場面もあるかもしれませんが、法人となるとそうはいきません。
条例で禁止となっているのに、60分を超えて大会やイベントをするとその企業は条例を守る気がないんだなと。
インターネットやゲームに関する法人のイベントは開催されなくなるでしょう。
イベント自体に特に問題がなくても、法人倫理が問われるリスクをおってまではやらないですよね。
今後、香川にはネットやゲームの産業は発達しません。
▼お寺でみんなで楽しく遊んだスマブラ大会だって、条例が通ったら開催不可です。
ゲームクリエイターを育成したり応援なんてしたりしようものなら、依存症を生み出す人を育てるのですからそれもできませんね。
インターネットの知識や技能は必須
5Gがいよいよはじまろうかという2020年において、インターネットのもたらしているメリットをまったく無視して、全員に等しく規制をかけるというのはあまりにも暴論ではないでしょうか。
プログラミング教育が必修化となり、世界中の知識に触れられるインターネットという世界を「よくわからないから」で、なんとなく規制するのはあまりに稚拙です。
意味のない禁止ではなく、道具はきちんと使えるようにする教育が必要です。
「こどもたちのため」というお題目を掲げながら、実際は「香川県ではゲーム依存症対策をしました」という大人の都合のための条例ではないでしょうか。
こどもたちの学びの機会を奪ってしまうような制限ではなく、適切に使うための教育プログラムを作る方が大切です。
香川県だけ情報格差ができる
条例では通信事業者にフィルタリングを要請する文言も入っています。
世界中の人が知識にアクセスできる中、香川県だけはデジタルサービスの制限を受ける可能性も十分に考えられます。
これは香川県民にとって明らかに不利益ではないでしょうか?
通信事業に携わる企業にとっても保守管理コストがあがり、なおかつメリットがありません。
住所から「香川県」を選択したら、「香川県にはサービスを提供できません」みたいなことになるかもしれませんね。
これがジョークのままで済めばよいのですが。
依存症につながるようなゲームって誰が決めるの?
「子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用」を60分を上限と書かれていますが、誰がどうやって判別するのでしょう?
オンラインで囲碁や将棋をする場合もありますよね。
目の前の人と将棋をするのは対局に60分以上かかってもかまわないけど、ipadやパソコンを使ってオンラインで対戦した場合は上限60分ですか?
同じゲームをやっても依存症になる人もいればならない人もいます。
それをネット・ゲーム依存症につながるコンピューターゲームの利用とどうやって判定すればよいのでしょうか。
プログラミングだって、楽しく学んでるこどもにとったらゲーム感覚ですよ。
そんなこどもがプログラミングの勉強に夢中になっていても60分で切り上げないといけないのですから、香川県では2度と優秀なプログラマーは生まれなくなりますね。
県民の「生活」を条例で一括規制するなんてありえない
あまりにも県民をバカにしているとしか思えません。
法律で禁止されているものでもない娯楽を、条例によって県民の生活を統制するなんて自由権の侵害ではないでしょうか。
「こどものため」「青少年の育成のため」という名目があれば、家庭生活にまで行政の力で踏み込めますという事例になりかねません。
パブリックコメント受付期間の不備
案・資料の公示(39条3項、40条1項)
意見提出期間は、公示の日から起算して30日以上でなければならないが、やむをえない理由があるときは、その理由を明らかにして、30日を下回る意見提出期間を定めることができる。
今回のパブリックコメントの受付期間は2020年1月23日 ~ 2020年2月6日の15日間のみ。
やむをえない理由も明らかにされないまま、公募期間は通常の半分の15日間に短縮されています。
しかも意見を提出できる人は限定的。
- 香川県内に住所を有する方
- 第11条に規定する事業者(インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)に供する事業又はコンピュー タゲームのソフトウエアの開発、製造、提供等の事業を行う者)
意見の公募(40条1項・41条)
意見公募手続を実施して命令等を定めるに当たっては、必要に応じ、当該意見公募手続の実施について周知するよう努めるとともに、当該意見公募手続の実施に関連する情報の提供に努めるものとする。
この条例素案が作られた経緯も議事録も公開はされておらず、素案のみがHP上からダウンロードできるようになっています。
行政手続きの不明さも、今回の条例を無理矢理通そうとしているように見えてしまいます。
何もやましいことがないならオープンな状態にできるはず。
本当にこどもたちと香川県の未来を考えるなら、よく議論されるべきです。
ゲーム禁止条例への意見表明まとめ
罰則規定もなく実効力もないまま、ただただ不便になり、誰のためにもならない条例案だと考えます。
万が一、この条例が通ってしまったとしても自分は意思表明したことの証としてブログにも内容を残しておきます。
締め切りまでにまた書くべき内容を思いついたら加筆して、同様の文章をパブリックコメントにも投稿させていただきます。
決まってから意見をだしても遅いので、賛成でも反対でも何か思うことがある方は意見を表明しておきましょう。
こどもたちに不自由な未来を押し付けてはいけません。
この文章を読んでも賛成なら賛成の意見を出してもよいです。
僕は反対意見を書いて投稿します。
ひとりひとりが考えて意見を述べることが大切です。
締め切りは2月6日まで、しっかり意見を述べましょう。