夏。
お坊さんはこれからお盆参りなどでたくさんのお勤めに参らせていただくのですが・・・・
この季節は「あるもの」との戦いでもあるのです・・・・。
お坊さんからみた景色。
まずはふだんお坊さんからみた景色がどんな感じかということをわかってもらわねば話になりません。
通常お勤めをさせて頂くときに、お坊さん視点はこんな感じです。
▼こういう折り本の場合は経卓(きょうじょく)の上に経本を置いて読み上げるわけです。
この経卓の上に、線香や香炉やろうそくの台(燭台)など道具がたくさん載っていると非常に経本が置きづらいので、仏壇のお飾りをする時はこちらの記事も参考にしてみてくださいね。
このような形でお勤めをするのですが、場合によってはお経を読みながら音木(おんぎ)というものを使います。
音木
▼音木というのは、写真のような木の角材で「カチカチカチカチ火のよ〜じん!」みたいなやつです。
▼2つの木をあわせて、お経の中の●印のところで打ちます。
●印にあわせて叩くことで、複数の僧侶で読むときにお勤めのテンポをあわせたり、どこを読んでいるかを知らせるはたらきがあります。
▼広い本堂で読むときなどはお経がずれるので、この音木の音がリズムキーパーの役割を果たします。
音木担当はページめくりに技術が必要なのです。
●印と●印の間は4文字ぐらいしかありませんから、音と音の合間、約1秒の間にページをめくらなければなりません。
もちろんお経も読みながら、しかも両手に音木を持って手がふさがった状態で。
お経を読みながら、全神経を集中させ、自分のタイミングで
「……ここだっ!!」
という所でサッとページをめくります。
▼おりゃっ!!
これを何回も繰り返しながら長いお経を読んでいるのです。
お坊さんの敵があらわれた。
この音木をうちながらお経を読むときにめちゃくちゃ集中してやらないとミスするわけなんですが、この夏の時期だけ表れる坊さんの敵がいます。
それがこいつ。
扇風機。
▼どーん。
お参りに行った先の家の人が、
「暑いとこありがとうねぇ、まぁこれで涼んでください。」
とかなんとか言って頂いて、そのお心は大変嬉しいんです。
ほんと感謝。
でも・・・。
スイッチオン!「強」!!
▼ぶおぉ〜ん!!
う、うぉぉぉぉ!勝手にページがめくれて読めん!!
両手ふさがってる!
紙バタバタなるっ!!
暑いのは大丈夫やから、風とめて〜っ!!
でも、お経読んでるから伝えられないっ!!
う、うわぁぁっ!!!
てなことになるんです。
読経を始める前に扇風機をつけてくれる方には
「あ、もうちょっと弱めにしてもらえたら・・・あ、そうそうそのぐらい。」とか言えるんですよ。
お勤めが始まって、こちらが完全にリアクションがとれない状態になってから、
「あ、扇風機忘れてた!」
みたいにマックスで扇風機つけてもらったりすると、う、うわぁぁぁ!ってなります。
……あと首振り。
扇風機がこっちをむくタイミングにあわせてお経本をおさえ、なおかつページをめくりながらお経も読むという超高等技術が必要となるのです。
みんな良かれと思ってして頂いてることは重々承知。
そのお心は十分伝わっていてありがたいと感じています。
しかしそのぶん「言、言えない・・・・。」という葛藤。
そんな扇風機と内面の葛藤を繰り返しながらお坊さんはお盆参りにいくのでありました。