塗香は火を使わない最古のお香。香りの力でリラックスして落ち着きを取り戻そう。

こんにちは、お坊さんブロガーのへんも(@henmority)です。

お香というと火をつけて使うものがイメージされると思いますが、実はいろんな形があるんです。

本日紹介するのは粉末タイプのお香である、塗香

パウダー状のお香を直接体に塗って使うお香なんです。

お香の最古の形とも言われる塗香について詳しく解説しますね!

塗香とは

沈香や白檀をはじめ、香木や香辛料などの原料をパウダー状にしたお香です。

▼粉末状のお香の原料をブレンドして香りを調合します。

▼ふるいにかけて滑らかなパウダー状にします。

▼使うときは少量を手にとってすりひろげ、体に塗って使います。

詳しい塗香の使い方はこちらの記事を参考にしてくださいね。

塗香のはたらきはお経にも書かれている

華厳経というお経の中には「塗香には10のはたらきがある」という記述があるんです。

塗香の10の功徳
  1. 精気を増益する
  2. 身体を芳潔ならしめる
  3. 温涼を調適する
  4. 寿命を長からしめる
  5. 顔色を光盛ならしめる
  6. 心神を悦楽ならしめる
  7. 耳目を清明ならしめる
  8. 人をして強壮ならしめる
  9. 見る者をして愛敬せしめる
  10. 大威厳を具する

<原文>
塗諸妙香 具十功徳 一増益精氣 二令身芳潔 三調適温涼 四長其壽命 五顏色光盛 六心神悦樂 七耳目精明 八令人強壯 九瞻覩愛敬 十具大威徳

大正大蔵経「大方廣佛華嚴經卷第十一」

このお香のはたらきを読むと本当にこんなに万能なの??と思いますよね。

劇的な効果があるとは言えないかもしれませんが、あながち嘘でもないんです。

というのも塗香の原料は香木を中心に、漢方薬に使われる薬草や香辛料などの天然の素材が調合されて作られているからです。

原料の中には防虫効果・消臭効果・防腐殺菌効果を持つものが含まれています。

▼香りのもつアロマテラピー効果はもちろんのこと、昔は漢方薬的な「薬としての使い方」と「お香としての使い方」の境界線はもっと曖昧だったのでしょうね。

このお香のはたらきは2500年以上前から知られていて、お香の最古の形は塗香であったと考えられています。

塗香は2500年以上前から使われていた

塗香は2000年以上前から使われていたことがわかっています。

今のように空間の香りをよくするために使うのではなく、体臭をおさえるために使われていました。

2世紀頃にインドで活躍された僧、龍樹が書いたとされる仏教書・大智度論(だいちどろん)にもこのように書かれています。

龍樹
インドはめっちゃ熱くて、体もめっちゃくっさいから、お香を体に塗って臭いをどうにかしてから仏さまや僧侶をもてなすんやで。

「天竺國熱又以身臭故以香塗身供養諸佛及僧以此因縁故」

天竺国は熱く又身の臭きを以ての故に香を以て身に塗り、諸仏及び僧を供養すべし

出典:大智度論

尊敬する方に対して失礼にならないように、また敬意を示すたしなみとして体臭をおさえること。

またそのために塗香が使われていたということが残されています。

▼お参りするするときには塗香を用いて身をきよめてから参っていたんですね。

現代人のような清潔さではなかったでしょうから、古代の人はさらに体臭もきつかったのでしょうね。

その後、インドから中国、そして日本に仏教が伝わったときにお香の文化も一緒に伝わりました。

2500年近くたった現代でもお寺では仏さまに参る時に「塗香を使う作法」が残っているんですよ。

現代まで伝わる塗香の作法

最初は体臭を抑えるためでしたが、のちに「清め」という意味をもつようになりました。

日本仏教の中でもお香は重要な役割を果たすようになります。

宗派によって塗香の使い方は違っていて、密教系の宗派に塗香を使う作法が多く残っているようですね。

浄土真宗の寺院では法要の時に先導をつとめる僧侶がおこなう「登礼盤(とうらいばん)」という作法の中で塗香を使います。

▼本尊の正面にある礼盤(らいばん)という盤の上に座って読経するときに使います。

▼礼盤に上がるとまず左脇に置いてある塗香を手に取り、両手ですりひろげ手を清めます。

▼次に塗香で口をぬぐって口を清め

▼胸をなでおろすように身を清めます。

▼それからお焼香をして合掌礼拝、お経を読むという流れになっています。

「塗香で身を清めてから仏さまに参る」という古来インドより伝わる塗香の伝統が現代の仏教にも残っているひとつの形です。

塗香は普段つかいもできる

こうやって法要の時に塗香を遣うのですが、昔から体臭をおさえるために使われていただけあって、塗香ってちゃんと調合されたものはすごくいい香りがするんですよ。

▼火も使わないので煙臭くもありませんし、香りで落ち着くといいますか、とても使い心地が良いんです。

香りの性質も香水のような周囲に主張する香りではなく、ほんのり香りをまとうという感じなのでいやらしくもありません。

この塗香をもちいる作法はひとつ重要なことを教えてくれているような気がします。

それは「自分が知らないうちに相手に与える影響まで心を配る」ということ。

自分の体のにおいは自分ではなかなか気づきにくいものです。

本人は平気でも知らず知らず周囲の人を不快にさせてしまうこともありますよね。

体のにおいに気をつけ、相手を不快にさせないよう気を配ることは「相手に敬意を示す振る舞い」です。

わが身を振り返り、また周囲にも配慮する心が大切だということを教えてくれている気がします。

塗香の効能

身だしなみのためにも使えますし、何より香りがいいので自分自身のリラックスのためにも効果的です。

天然のお香の香りはリラックスや落ち着きを取り戻すためにも効果がありますよ。

塗香は粉末で軽いので持ち運ぶ時にも荷物になりません。

火も使わないのでどこでも使えるんですよね。

塗香は手軽にどこでもお香の香りを楽しめるので、お香が好きならぜひためしてみてくださいね。

おすすめの塗香

手前味噌になりますが、ぼくが開発に関わったoikaze〜灯心草〜というお香も良い香りですよ!

い草をつかったさわやか系のお香の香りで、男性向けに作りましたが女性にも人気があります。

もしどの塗香を使ったらいいかわからないなら、このoikaze〜灯心草〜からはじめてみてはいかがでしょうか?