伽羅の香りは桁違いだった!!法事で「香りを聞く」香道体験。

こんにちは、お坊さんブロガーのへんも(@henmority)です。

先日善照寺の本堂でご法事を勤めさせて頂いた時に、参列頂いた方の中に「香道」を学んでおられる方がおられました。

ご法事の時に伽羅をお供えさせて欲しいとのお申し出を頂き、香道でどんな風にお香を扱うのか一部始終を見学させていただきました。

お坊さんもお香を使うけれど

われわれ僧侶が普段お香を使う場面は3通り。

  1. 線香をお供えする。
  2. お焼香をする。
  3. 登礼盤という作法の時に塗香(パウダー状のお香)を使う。

他宗派でお香を焚く作法などもあるのかもしれませんが、浄土真宗ではお香の扱いに関しての作法は余り多くはありません。

特に難しい事はなくて、火を付けてお供えするか、焼香をするぐらいです。

お香とは関わりが深いですから「香道」というものがあるのは知ってましたが、実際どんな風に味わう物なのかこの機会に勉強させて頂きました。

知らないことを実際に目の前で教えて頂けるのは本当にありがたいことですね。

道具も作法も初めて見るものばかりだったのでとても興味深い体験をさせていただきました。

香道のお香の楽しみ方

1.炭団(たどん)に火をつける。

そもそも「たどん」という言い方すら知らなかったですが、ようは炭の粉末をつなぎを使って固めたものだそうです。

▼この炭団が香をたたせる熱源になります。
炭団を熱する

2.香炉と灰を用意します。

▼灰もきめ細かくきれいです。
香炉

3.雲母の板・銀葉や道具一式

焼香の時は熱した炭に直接お香をくべますが、香道ではちょっと方法が違います。

▼この写真のような「銀葉」とよばれる雲母(うんも・鉱物)の板を炭の上にのせて、間接的に香木を熱するんだそうです。
雲母プレート2

その銀葉を使う前に仮に置いておく銀葉盤という台なども。

一旦この菊の花のような台の上に銀葉をおいておいてから、実際使う場所に移すそうです。

▼香「道」というぐらいですので、その振る舞いの美しさや手間というところも味わいの1つなのですね。
雲母プレート

香道に使う道具
  • 銀葉挟(ぎんようばさみ)銀葉を挟むピンセット的な道具
  • 香筋(きょうじ)香木をつかむ際に使用します。お箸みたいなやつ。
  • 香匙(こうさじ)香木をすくって銀葉の上に載せるときに使うほそいスプーンの様な形をした道具。
  • 鶯(うぐいす)組香の際、香を焚いた後の香包を刺して止めておく針のようなものです。
  • 羽箒(はぼうき)羽。香炉の中についた灰の掃除をする時に使います。
  • 火筋(こじ)火箸のようなもので、炭団を入れたり、灰に箸目をつける時に使う道具です。
  • 灰押(はいおさえ)灰を押さえて山形に形を作る道具です。
道具

4.香炉の灰に穴を開けて炭団を埋めます。

▼円柱状の炭、炭団に火をつけて、香炉の灰の中心に穴をあけて埋め込みます。
炭団埋める

5.周りの灰を混ぜながら炭団の上にかぶせます。

▼周辺の灰をふんわりと混ぜながら炭団の上にかぶせます。
杯をかぶせる

6.灰押で灰を山形に成形します。

▼中心に向けて山を作るように灰を押し固めていきます。
整形

7.灰に筋目をつけていきます。

▼灰に規則的な筋目をつけていきます。
溝をかく

8.一部筋のないところが聞き口だそうです。

▼お香の香りは「嗅ぐ」とか「臭う」ではなく「聞く」といいます。この手前の部分から香りを聞きます。
出来上がり

9.銀葉をのせて、その上に香木をのせます。

灰に手をかざすとほんのり暖かく、その上に先ほどの銀葉をのせて香木をのせます。

今回は沈香の中でも特級品である伽羅を聞かせていただきました。

焼香と違うのはほんのり暖めて香りを立たせるので煙はでないというところ。

▼手で覆いを作って、香炉と手のひらの間に香りを溜めてそれを聞きます。

10.むっちゃ聞いてます。

香道では香木=沈香を六国五味という分類をするそうです。

六国(品質によって分類)

下記の6種に分類し、また香りの特性を5つの味で表現するそうです。

六国
  • 伽羅
  • 羅国(らこく)
  • 真南蛮(まなばん)
  • 真那伽(真南賀)(まなか)
  • 佐曽羅(さそら)
  • 寸聞多羅(すもたら)

五味(味覚によって分類)

五味
  1. 甘(あまい)
  2. 酸(すっぱい)
  3. 辛(からい)
  4. 苦(にがい)
  5. 鹹(しおからい)

実際に香りを聞いてみると、花とか果物とはまったく種類の違う甘い香りの中に、しびれ感というかスパイシーさがあるような幽玄な香り。

普段つかっている沈香や伽羅の線香で感じる香りとは味わいが違うということはよくわかりました。香の立て方の違いも大きいのかもしれません。
香を聞く

伽羅の香りは本当にすごい。

このあと法事に参って頂いた方全員で順番に伽羅の香りを聞いて、そのお香をお供えしてお勤めをさせて頂きました。

使った香木は1mm×3mm程度の折れた鉛筆の芯ぐらいの大きさでしたが、法事の間本堂全体にほのかに香りが広がっていきました

見た目はただの木の破片なのですが、そんな小さな破片で70畳はある空間を香りで満たすのですから伽羅というのは本当にすごい香木ですね。

お香はこちらから仏さまに供えるとともに、浄土の清浄な空気という世界観を表現する役割を持っています。

ですから煙がでればそれでいいというのではなく、香りのいいお香を使う事がお香を供える時には大切です。

この体験はそういった教義的にもかなったことで、とても貴重な体験をさせて頂いたことであります。

伽羅は香りも素晴らしいですが、その分値段もとんでもないのでよほど好きな方でなければ買えないと思いますが・・・興味あるかたはぜひどうぞ。

伽羅の香りを自宅で楽しみたい方

伽羅は値段が高いので手軽にとはいきませんが、もしお財布が許すなら死ぬまでに一度は味わって欲しい香りですね。

まず、伽羅を買うのに大事なことは信頼できるお店で買うということ。

香木は偽物が出回ってますので、買い付けルートのしっかりしているところで買いましょう。

お香の専門家岩佐喜雲さんの扱う伽羅は仕入れルートからしっかり保障できるものを扱っているそうです。

その岩佐さんから教えてもらったところ、伽羅の香りを楽しむ香炉は電子香炉がおすすめとのこと。

岩佐喜雲

初心者が香道の道具を準備するのは大変ですし、扱いが難しいです。

電子香炉なら温度調節がしやすいので香りも綺麗にでます。

初心者じゃなくてもおすすめですよ。

香炉だけでも値段が高いのでお香の世界はハードルが高いですが、奥ゆかしい世界がありますので興味の出た方はためしてみてる価値はあります。

また、香木そのものの香りとはいえませんが、風韻シリーズの伽羅は比較的伽羅の香りに近いので試してみてください。

線香に関して「お坊さんがオススメする線香・お香まとめ」という記事もございますので、興味がある方はこちらもどうぞ!

伽羅は沈香と言われる香木の特級品です。

沈香がどんな香木なのかはこちらで詳しく解説していますのであわせて読んでみてください。

追記:お香をプロデュースすることに

お香のことをブログで書いているうちに、お香をプロデュースするという仕事がはじまりました。

第1弾はお線香ではありませんが、塗香という体に塗って香りを楽しむお香をプロデュース。

中高年の男性にぜひ使っていただきたい香りとなっております。